大判例

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大阪高等裁判所 平成元年(ネ)1637号 判決

主文

一、本件控訴を棄却する。

ただし、原判決主文第一項は、被控訴人の訴えの一部取下げにともない、次のとおり変更された。

「 被告(控訴人)は、原告(被控訴人)に対し、平成元年四月一四日から平成二年四月一五日まで、一か月金六五万九〇〇〇円の割合による金員を支払え。」

二、控訴人は、参加人に対し、原判決別紙物件目録二の(一)ないし(四)記載の各建物を明け渡し、かつ、平成二年四月一六日から右明渡し済みまで一か月金六五万九〇〇〇円の割合による金員を支払え。

三、控訴費用及び参加によって生じた費用は控訴人の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、控訴人

1. 原判決中、控訴人敗訴の部分を取り消す。

2. 右部分についての被控訴人の請求を棄却する。

3. 参加人の請求をいずれも棄却する。

4. 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とし、参加によって生じた費用は参加人の負担とする。

二、被控訴人

主文第一項本文と同旨(なお、被控訴人は、当審において、控訴人に対する本訴請求中、建物明渡請求および平成二年四月一六日から建物明渡し済みまでの損害金請求部分を取り下げた。)

三、参加人

1. 主文第二項と同旨(なお、参加人は、控訴人に対する同請求とともに、被控訴人に対し、原判決別紙物件目録二の(一)ないし(四)記載の各建物の所有権確認を求め、適法に本件訴訟に参加した後、被控訴人及び控訴人の同意を得て、被控訴人に対する右所有権確認の訴えを取り下げた。)

2. 参加によって生じた費用は、控訴人の負担とする。

第二、当事者の主張

一、被控訴人の本訴請求について

被控訴人の本訴請求についての当事者双方の主張は、当審における控訴人の主張を次のとおり付加するほかは、原判決の事実の第二に摘示のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決二枚目表一三行目の「所有している」を「平成二年四月一六日参加人に売り渡すまで、同建物を所有していた」と改め、二枚目裏五行目の「所有権」から六行目の「ともに、」までを削除し、七、八行目の「右明渡済に至る」を「平成二年四月一五日」と、一二行目の「現に」を「その損害金請求にかかる期間」と、同じ行の「所有している」を「所有していた」と、一三行目の「争う」を「否認し、被控訴人が平成二年四月一六日本件占有物件を参加人に売り渡したとの点は知らない」とそれぞれ改める。)。

1. (控訴人-再抗弁3に対し)

民法三九五条ただし書の規定は抵当権者の利益保護を目的とするものであるから、右ただし書の規定に基づき本件賃貸借契約を解除した判決(神戸地方裁判所昭和六三年(ワ)第六六一号事件)による本件賃貸借契約解除の効果は、抵当権者たる訴外銀行と賃借人たる控訴人間及び訴外銀行と賃貸人たる被控訴人間でのみ生じるとすれば必要にして十分であって、本件賃貸借契約の当事者である控訴人と被控訴人との間においても契約解除の効果が生じると解すべきではない。仮に、右解除判決により控訴人と被控訴人との間においても本件賃貸借契約解除の効果を生じるものとすると、賃貸人たる被控訴人が漁夫の利を得ることとなり不当であるからである。

2. (被控訴人)

控訴人の右主張は、争う。

二、参加請求について

1. 参加請求原因

(一)  被控訴人の本訴請求原因1ないし3を援用する。

(二)  参加人は平成二年四月一六日、被控訴人から本件建物を買い受け、同月二三日、所有権移転登記手続を経由した。

よって、参加人は、控訴人に対し、所有権に基づき本件占有物件の明渡しを求めるとともに、不法行為による損害賠償請求として平成二年四月一六日から右明渡し済みまで一か月六五万九〇〇〇円の割合による損害金の支払を求める。

2. 参加請求原因に対する認否及び控訴人の抗弁

(一)  参加請求原因(二)の事実は、知らない。

(二)  参加請求原因(一)に対する認否及び抗弁については、本訴請求原因に対する認否及び抗弁を援用する。

3. 抗弁に対する認否及び参加人の再抗弁

抗弁に対する認否及び再抗弁については、本訴抗弁に対する認否及び本訴再抗弁を援用する。

4. 再抗弁に対する認否及び控訴人の主張

再抗弁に対する認否及び控訴人の主張については、本訴再抗弁に対する認否及び前記一1を援用する。

第三、証拠〈略〉

理由

一、被控訴人の本訴請求について

当裁判所も、被控訴人の本訴請求(当審における訴えの一部取下げ後のもの)は、平成元年四月一四日から平成二年四月一五日まで一か月金六五万九〇〇〇円の割合による損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次の1のとおり、原判決の説示を加除、訂正し、同2のとおり、再抗弁3に対する控訴人の主張についての判断を付加するほかは、原判決の理由一ないし六(ただし、原判決一二枚目裏二行目の「棄却、」まで。)に説示のとおりであるから、これを引用する。

1. 七枚目裏二行目の「原告が」の次に「その主張の参加人に対する本件占有物件の譲渡前に」を加え、七行目の「に認定」を削り、九枚目裏六行目の「現に」を少なくとも平成二年四月一五日まで」と、同じ行の「所有している」を「所有していた」とそれぞれ改め、一一枚目裏五行目の「所有権に基づき、」を削除し、六行目の「明渡」を「不法占有にかかる損害の賠償」と、九行目の「被告は、」から一一行目の「有する者」までを「前記短期賃貸借契約解除等請求訴訟の判決が確定したことによって、賃借人たる控訴人の占有は不法占有となり、控訴人は、所有者であった被控訴人に対する関係で民法一七七条に定めるところの登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する「第三者」」とそれぞれ改め、一二枚目表一〇行目の「所有権」から同じ行の「ともに、」までを削除し、一二行目の「右明渡済に至る」を「平成二年四月一五日」と、一二枚目裏二行目の「棄却し、」を「棄却すべきものである。」とそれぞれ改める。

2. 控訴人は、民法三九五条ただし書の規定に基づき賃貸借契約の解除を命ずる判決による契約解除の効果は、抵当権者と賃貸人及び抵当権者と賃借人との各関係でのみ生じ、賃貸人と賃借人との関係においては契約解除の効果を生じない旨主張するが、もともと右ただし書の規定に基づく短期賃貸借契約解除請求訴訟は、抵当権者を原告とし賃貸借契約の両当事者を共同被告として、賃貸借契約関係自体を解除し、これを消滅させることを目的とする形成訴訟であるから、右訴訟において賃貸借契約の解除を命じた判決による契約解除の効果は、抵当権者と賃貸人及び抵当権者と賃借人との各関係について生じるばかりでなく、賃貸借契約の当事者である賃貸人と賃借人との関係においても解除の効果を生じ、目的物の所有者たる賃貸人は賃借人に対して明渡しを求めることができるものと解するのが相当であって、右形成判決による契約解除の効果を、控訴人主張のように相対的、限定的に解すべき合理的な理由を見出すことはできない。所論は、失当というべきである。

二、参加請求について

1. 成立に争いのない丙第一号証、同第二号証の二、三及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる丙第二号証の一によれば、参加請求原因(二)の事実を認めることができる。

2. 参加請求原因(一)、控訴人の抗弁及び参加人の再抗弁に対する判断は、原判決理由の一ないし五の説示と同旨である(ただし、その四の3は除き、かつ、七枚目裏二行目の「原告が」の次に「その主張の参加人に対する本件占有物件の譲渡前に」を加え、七行目の「に認定」を削り、九枚目裏五行目の「復帰し、」から六行目の「所有している」を「復帰した」と改める。)から、これを引用し、控訴人の主張についての判断は、前一2に説示のとおりである。

3. そうすると、控訴人に対し、所有権に基づき本件占有物件の明渡しを求めるとともに、不法行為による損害賠償請求として平成二年四月一六日から右明渡し済みまで一か月六五万九〇〇〇円の割合による損害金の支払を求める参加請求は、いずれも理由がある。

三、よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから民事訴訟法三八四条によりこれを棄却し、参加請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし、控訴費用の負担につき同法九五条、八九条を、参加によって生じた費用について同法九四条、八九条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

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